１３．旦那様（ニセ）、鈍感嫁（ニセ）にプロポーズ大作戦です！　その２

「気にしないで、本当に大丈夫だから。一矢がしっかりと気を配ってくれて、中松もすぐ助けに来てくれたから。中松にちゃんと私のことを見ておくように頼んでくれていたのは、一矢でしょう？」

「そうだ。しかし、私の配慮が足りなかった。大切な伊織を……あんな危険な目に遭わせてしまうなんて」

「もう平気よ、何てことないから！」

　私が努めて明るく笑顔を作ると、一矢は真剣な顔で私を覗き込んだ。

「本当に……大丈夫なのか？」

「本当よ、心配しないで」

その時、一矢が私の手をぎゅっと握った。彼の温かく大きな手に包まれて初めて、自分の手が細かく震えていることに気づかされた。

「こんなに震えているではないか。何があったか、中松から詳細に報告を受けている。さぞ怖かっただろう……本当に、すまなかった」

「私、震えてたんだ……自分でも気づかなかった。必死だったから、一矢に心配かけないように、大丈夫だと思い込もうとしていたの。でも、身体は正直ね」

　自分でも驚くほど、心の奥底にある恐怖を実感した。自分があの瞬間をどれほど怖がっていたかを改めて理解した。

「柚香と杏香には然るべき措置を取り、約束通り三成家から追放する。二度と伊織には指一本触れさせない」

「うん……ありがとう」

「伊織のことがなければ、本家で勝手にしていればいいと思っていたが、お前に手を出すとは許せない。たとえお前が許しても、私は絶対に許さない。今回のこと、絶対に情けはかけない。本来なら中松に命じて始末してやりたいくらいだが、あいつが手を汚すのは許せない。だから、財産を全て没収した上で追放する。これでも生ぬるいくらいだが、贅沢三昧で生きてきたあの二人には、十分な報いになるだろう」

　一矢の毅然とした表情が頼もしく、胸が熱くなった。

「あの人たちはずっと一矢に酷いことをしてきたんだもの。当然の報いよ」

　幼い頃の一矢は、きっと独りでずっと孤独に戦ってきたに違いない。今さらながら、もっと寄り添ってあげればよかったと心が痛んだ。

「ごめんね、一矢」

「なぜ……伊織が謝るんだ。謝らなければならないのは、私の方だ」

「お義姉さんたちがあんな恐ろしい人だったなんて全然知らなかった。あなたが苦しんでいるときに、もっとそばにいて助けてあげればよかったと思って……今になって後悔してるの」

「伊織……」

　一矢が切なげな瞳で私を見つめ、静かな声で問いかけ